ここでは「灸」を使った言葉を紹介しています。

「お灸を据える(罰を与える)」「皮切(物事の始め)」等は現在でもよく耳にする言葉です。

 

 

●灸点

①灸をすえる所に墨で書く点。

②灸をすえる事。

③灸点屋の略。

 

●点灸

灸をすえる事。

 

●点穴

灸をすえる場所に黒点を付ける事。

 

●灸日(やいとび)・灸据日(きゅうすえび)

灸をすえる日。陰暦2月2日・8月2日にすえる地方が多い。1月20日のトンドに合わせて施灸する地方もある。

 

●二日灸・如月(きさらぎ)の灸

陰暦2月2日・8月2日にすえる灸の事。この日に灸をすえると1年中健康に暮らせると言われた。

 

●後の二日灸・秋の二日灸

陰暦8月2日にすえる灸2月2日の春の二日灸に対していう。

 

●寒灸(かんやいと・かんぎゅう)

寒中に灸をすえる事。効が大きいという。

 

●初灸(はつやいと・はつきゅう)

新年になって初めて灸をすえる事

 

●二十日灸

正月20日に新年最初の灸をすえる事

 

●いっぱちの灸

毎月1日・8日にすえる灸。俗信で特に効き目があるとされる。

 

●土用灸

夏の土用にすえる灸で特に効き目があるという。

 

●迎灸(むかいやいと)

盂蘭盆(陰暦7月15日を中心に行われる仏事)の最初にすえる灸。

 

●日灸(ひやいと)

毎日灸をすえる事、またその灸。

 

●灸箸(やいとばし)

①艾をはさむ箸で桃の木で作った。

②~にて目をつく→すばしこくて細かい事の例え。

 

●灸の蓋

灸のあとに貼る膏薬等を伸ばして塗った紙。

 

●灸饗(やいとぎょう)

灸療治の時に供する酒食。子供に灸をすえる時に我慢の見返りとしてやる菓子等の事をいった。

 

●止灸・留灸(とめきゅう)

①病気の再発を止めるための灸という意味を込めて最後にすえる灸。

②『日用灸法』→灸火の法「灸し終らんとする時、灸穴に塩を口にて噛て付て其上に艾を大にして2,3壮灸して置へし」

 

●早灸

失神等の時に用いて即効を期待する灸。

 

●灸所(きゅうしょ)

①灸治のツボ、また、灸をすえた所。

②急所に同じ。

 

●猪目灸(いのめやいと)

猪目(腰眼穴)にすえる灸の事。

 

●傘灸(からかさきゅう)

拇趾と示趾の間(行間穴)にすえる、のぼせを下げる灸の事。

 

●陰の灸(やいと)

紙にその人の姿を描いたり、その人の身長を記したりして、これに灸をすえて病気を治す事。

 

●灸風邪

灸をすえた時、又はその後に引く風邪の事。

 

●きゅうじの穢れ(けがれ)

灸による治療のため、身が穢れて神に近づくのをはばかる事。

 

●灸見舞(きゅうみまい)

二日灸や子供も初めての灸を見舞う事。

 

●灸屋・灸点家・灸点師

灸をすえるのを職業とする人の事。

 

●灸下(きゅうおろし)

灸をすえる人の事。

 

●灸の婆(やいとのばば)

灸をすえるのを生業とした老婆。

 

●灸据所・灸点所

①灸をすえる体の部分。

②灸をすえる事を生業とする家の事。

 

●烏(からす)の灸

(子供等の)口角炎。烏に灸をすえられたという。

 

●皮切(かわきり)

①最初にすえる灸。2壮目以降より熱感が強い。

~の一灸(ひとひ)→最初にすえる灸。何事も最初は苦痛である事の例え。

~の閻魔→皮切の灸をすえる時の苦痛をこらえて恐ろしい顔をした閻魔の顔。恐ろしい顔を一層恐ろしくしている事の形容。

②物事のし始め。

 

●生灸(なまやいと)

①すえて間もない灸点の事。

②~の皮を剥ぐ→好んで事を荒立てる事。

 

●きゅうをすえて山を見る

灸をした後その灸所がふくれて快方に向かう事。辛い思いをした後で目的を達する喜びをいう例えの事。

 

●灸をすえる

①灸所に置いて艾に火を付けて治療をする事。

②厳しく戒める、叱る。

③放火する事。盗人仲間の隠語。

 

●えどの灸(やいと)

上方から放蕩息子を江戸へ下し、修行させる事をいう。

 

●石に灸・土に灸・石に針

①他者からの働きかけもまるで効き目を表わさない事の例え。

②石に灸(やいと)の仇煙(あだけむり)→まるで効き目を表わさない事。

 

●雪駄の裏に灸・草履に灸

長居の客を早く帰らせるまじないの一つ。

 

●ほうきも灸も利かず

長居の客を早く帰すためにほうきを逆さに立てたり、下駄に灸をすえたりするまじないをしても、その効き目がない事。

 

●遠くの火事より背中の灸

自分に関係のない事よりも、その身に降りかかるわずかな難儀の方が辛い事。

 

●かえるが腹の灸据える

蛙は目の位置の関係で、自分で腹に灸をすえようとしても困難である所から、手軽には出来ない事の例え。

 

●ふぐ好きで灸嫌い

不養生になるような事を好んでする一方、養生は大嫌いでどうしようもない事。

 

●長持(ながもち)に灸

売れない遊女が売れるようにと、長持(収納箱)に灸をすえるまじないの事。

 

●灸治暇(きゅうじか)

官人が灸療治のために請願して得た休暇の事。

 

●灸下(きゅうさがり)

江戸時代、奥女中等が灸療治のために暇をもらい里に帰った事。

 

●やいとの足

休息の洒落。「灸足」を音読みした「きゅうそく」を掛けたもの。

 

 

【参考文献】

「画像史料からみるお灸の歴史」資料

『日本国語大辞典』小学館

『家伝灸の資料』西本繁